「最近、口の中がよく乾く」「食事のときに飲み物がないと食べづらい」「朝起きると口がねばつく」——こうした口の乾きの症状を、ドライマウス(口腔乾燥症)と呼びます。とくに年齢を重ねるほど起こりやすく、放っておくと虫歯や歯周病、口臭、食べにくさにつながることもあります。ここでは、ドライマウスの原因とご自宅でできる唾液を守るケア、そしてシニア世代に大切な口腔ケアと誤嚥(ごえん)の予防について、やさしくご説明します。
ドライマウスとは
ドライマウスとは、お口の中をうるおす唾液の量や働きが減って、口の中が乾いた状態になることをいいます。健康な方でも一日におよそ1リットルから1.5リットルほどの唾液が出ているといわれ、この唾液は食べ物を飲み込みやすくしたり、細菌の増殖をおさえたり、歯を守ったりと、たくさんの役割を担っています。
唾液が減ると、こうした働きが弱まり、口の中がねばつく、舌がヒリヒリする、話しづらい、入れ歯が合わなくなる、味を感じにくくなる、といった変化があらわれます。一時的な乾きであれば心配のいらないことも多いのですが、長く続く場合や日常生活に支障が出る場合は、歯科医院でご相談いただくのが安心です。
主な原因(加齢・薬・口呼吸・全身疾患)
口の乾きには、いくつかの原因が重なっていることが少なくありません。代表的なものを順に見ていきましょう。
ひとつめは加齢です。年齢を重ねると唾液をつくる唾液腺の働きが少しずつ低下し、若いころより唾液が出にくくなる傾向があります。ふたつめはお薬の影響です。血圧の薬、アレルギーの薬、抗うつ薬、睡眠薬など、多くのお薬には副作用として口を乾かす作用があるものがあり、複数のお薬を飲んでいる方ほど影響が出やすくなります。気になる場合は自己判断で薬をやめず、処方した医師や薬剤師に相談しましょう。
みっつめは口呼吸です。鼻づまりや口がぽかんと開く習慣があると、口の中の水分が蒸発しやすく、とくに就寝中に乾きが強くなります。よっつめは全身の病気の影響です。糖尿病やシェーグレン症候群などの疾患、また緊張やストレスでも唾液は減りやすくなります。原因が複数あることも多いため、長引く乾きは一度きちんと調べてもらうことが大切です。
唾液を守るセルフケア
ご自宅でできる工夫で、唾液の分泌をうながし、口の乾きをやわらげることができます。まずはこまめな水分補給です。一度にたくさんではなく、少量をこまめに口に含むようにすると、お口がうるおいやすくなります。
食事のときはよく噛むことを心がけてください。噛む回数が増えると唾液腺が刺激され、自然と唾液が出やすくなります。やわらかいものばかりでなく、歯ごたえのある食材も適度に取り入れるとよいでしょう。また、唾液腺マッサージもおすすめです。耳の下や顎の下、舌の付け根のあたりを指でやさしく押したり円を描くようにさすったりすると、唾液腺が刺激されて唾液が出やすくなります。痛みを感じない程度に、食事の前などに数回行うのが目安です。
このほか、就寝時の口の乾きには室内の加湿が役立ちます。口呼吸が気になる方は、鼻の不調を放置しないことも大切です。市販の保湿ジェルや洗口液を使う方法もありますが、お口の状態に合うものを選ぶために、歯科医院で相談すると安心です。
シニアの口腔ケアと誤嚥予防
シニア世代では、口の乾きが「オーラルフレイル」と呼ばれるお口の働きの衰えのサインのひとつになることがあります。噛む力や飲み込む力、舌の動きが弱まると、食べる量が減って栄養が偏ったり、会話が減ったりと、全身の元気にも影響します。お口の小さな変化に早めに気づき、ケアしていくことがとても大切です。
とくに注意したいのが誤嚥性肺炎です。飲み込む力が弱まると、食べ物や唾液が誤って気管に入り、そこに口の中の細菌が一緒に運ばれて肺炎を起こすことがあります。これを防ぐには、毎日の口腔ケアでお口の中を清潔に保つことが何よりの予防になります。歯みがきはもちろん、入れ歯の方は入れ歯の洗浄、舌の汚れ(舌苔)のやさしいお手入れも心がけましょう。ご自身でのケアが難しい場合は、ご家族や介護者の方が手伝ったり、歯科医院や訪問歯科で定期的に診てもらったりすることが、お口と全身の健康を守る大きな支えになります。
口の乾きや飲み込みづらさは、年齢のせいと我慢されがちですが、適切なケアで改善できることが少なくありません。気になる症状があれば、早めに歯科医院でご相談ください。より詳しい情報は、e-ヘルスネット(厚生労働省)や8020推進財団のサイトも参考になります。